3月の作曲

3月は春から夏にかけて予定している企画のための作曲と準備を進めていた。3月も初旬はこんなに寒いものかと思っていたら、あっという間に三寒四温、冬と春を行き来する日々がはじまり、今はすっかり桜も舞い始めて若葉も認められるようになっている。新しい季節の訪れや移ろいを予感する間もなく、すべてがあっという間に過ぎ去ってしまいそうで、だから考えていることや感じていることを言葉に残そうという気持ちになった。

相変わらず作曲は考えはじめるとうまくいかない。だから考えているけれど考えていないという宙ぶらりんの状態で今は草稿を多く書くようにしている。草稿から良いと思えるものをブラッシュアップする作業は何時間でも集中して続けられるのだけど、ゼロから1にする手続きは調子の波もあって大変に骨が折れる。それで午前中は珈琲を多めに飲むようになり、午後になると出かけることが多くなる。こういう集中力が求められる作業はせいぜいお昼ごはんを食べるまでが限度で、それより先はやっても実りのない結果に終わることが多い。それでも昔は食らいつくようにピアノに向かっていたけれど、もう最近は素直に降参することにしている。

それで先日は暖かかったので、日が暮れる前に作業を切り上げてうきうきした装いで神田へ出かけた。お目当てはtetokaで開催中の小川哲さんの展示だったのだけど、途中で御茶ノ水に立ち寄り中古のベースを手に入れた。フェンダージャパンの中古のプレベ、90年製なのでほとんど同い年。決して楽器の中では上等と言われるものではないけれど、長いあいだ演奏されてきた痕跡が楽器に刻まれていて、そんなところも含めて大変気に入った。90年製でネックのロッドの余裕も十分ということなので、ずっと弾き続けられるでしょう。すこし前にMさんが古い車を修理しながらずっと乗られていることを書いたけど、同じような愛着をいろいろなものに持てたらと思っている。


【Satoshi Ogawa Exhibition “BIRDS”】

小川さんの展示「Satoshi Ogawa Exhibition “BIRDS”」へ。
パターンと即興性がひとつの絵の中で対立しない、そんな作曲ができないか考えながら。一日の些末な出来事はいくらでも言葉にできるのに、作品を前にすると言葉にできることは少ない。言葉にする力不足なのだけど…それでもきっと言葉にできる範囲は限られているような気がする。


【wakkaのこと】

2月、Oi-SCALEのみなさんとwakka 2021年道志村Ver.の撮影をしたときのこと。その日は夕方になると一気に冷え込んで、ギターを弾く手がかじかんでしまって演奏するだけでも精一杯だった。それに露がギターについてしまって楽器のコンディションも心配だったり、撮影なので待ち時間も長く、焚き火はあれど寒い中を待っていると芯から冷えてくる。ただ、終わってみるとその記憶が強烈に刻み込まれていて、普段は昨日のお昼ごはんすら思い出すのに難儀するくせに、あの日のことだけは最初から最後まですべて覚えている。

その日は残念ながら曇り空だったので星は少ししか見えなかったけど、晴れていると大変に星空が綺麗らしい。作中のセリフに、月明りで影ができる…そんな下りがあったはず。4年くらい前に盛岡へ旅行に行ったとき、誰もいない真夜中の温泉街から見上げた満天の星空は、流れ星がそのありがたみがわからなくなるくらい沢山流れていた。どちらも、非日常に全身でダイブした体験。

6月にwinter light ensemble(次は名前を改めるかも)の新曲の収録をするので最近はその準備をしている。そしてこのアンサンブルならライブに来てくれるみんなを同じように非日常に連れていける、そんな気がしている。どこか遠くへ行く体験はかけがえのないものだけど…このアンサンブルなら東京の夜でも満点の星空をみんなに見せられると思って曲を書いている。次も無観客のライブ動画の撮影という形式だけど…いつか本当のライブを企画したい。


【お知らせ】

Winter Light Ensembleの音源をbandcampに公開しました。youtubeよりちょっと音質が良くなってます。
ライブ動画を気に入っていただいた方はぜひダウンロードしていただけると嬉しいです。

https://shintaro-tanaka.bandcamp.com/album/winter-light

ライブ動画もぜひ…冬が主題の7曲です。
桜は花開きましたが、まだ寒さを感じられるうちにご覧ください。

winter light ensemble